となりまちプロジェクト 武蔵野・三鷹・小金井

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となりまちプロジェクト 武蔵野・三鷹・小金井

となりまちの農家さん 櫻井農園・櫻井敏史さん(武蔵野市)

2021.2.25

境浄水場の北側、武蔵野市関前で武蔵野の特産品である「東京うど」をつくる櫻井敏史さんにお話をうかがいました。まずは畑へ案内していただきました。広い…とても広いです…!住宅地の中でこんなに広い畑が武蔵野市にあるとは知りませんでした。すでに時期が過ぎていましたが、櫻井さんの畑では毎年サツマイモを広範囲に植え、市内外の幼稚園や小学校の芋掘り体験を受け入れています。昨年は20団体もの子どもたちが元気に芋掘りを楽しんだのだとか…!
櫻井さんはこの地で代々続く「櫻井農園」の9代目。間違いなく若手ですが、東京農業大学を卒業後に農業の道に入り、農家歴はすでに10年以上という頼もしい農家さんです。農家という家業を継ぐことに迷いはなかったという櫻井さん。「親が楽しそうにやっていたのを見ていたからかもしれません」と、当時の思いを教えてくれました。現在は櫻井さんが主に一人で、機械も導入しながら3か所の畑で櫻井農園の野菜を育てています。

この時期の畑にはまだまだ収穫中のキャベツやブロッコリー、ちょうど時期を終えたフキノトウもありました。そして、畑の片隅で出番を待つ木の根っこ…。これはこの辺りで昔からつくられている「東京うど」なんだそうです。根っこの付け根から新芽が顔を覗かせていました。初めて見ました…!

うどの根っこを記憶に留めつつ、櫻井農園母屋のほうにあるハウスも併設された畑へ。こちらの畑では、櫻井さんが「とにかくおいしい」と注目している子持ち高菜が育っていました。同じく武蔵野市の仲間の農家さんに紹介されて子持ち高菜をつくり始めたという櫻井さん。わさわさと育っている葉っぱの根元をかき分け、小さなつぼみのようなわき芽を収穫するのだそうです。3市内のJA直売所で見かけた方もいるかもしれません。豚肉と炒めたり、天ぷらにしてもおいしそうです。

そして櫻井さんが案内してくれた畑の中央あたり。足元に穴が空いています。覗いてみるととても深いです。この穴は「うど室(うどむろ)」と呼ばれる、うどを育てる地下室でした。先ほど畑で見せていただいたうどの根っこをこの地下室で育てるのです。深さは3〜4mほど。武蔵野台地の下にある赤土の関東ローム層がうど室をつくるのに適していたということで、地下室での栽培法が生まれたそうです。武蔵野でのうど生産は江戸時代に遡り、季節物として貴重な食材だったのだとか。そういえば、以前、玉川上水を散策しているときに「うど橋」もありました。

うどは、まず露地の畑で育てて、地上で育った部分が枯れてから掘り起こし、時期がきたら地下に植えるという、とても手間と時間のかかる農作物なのでした。さらに出荷時期を早めるために、まずは高原で育ててから地元に持ち帰り地下室に植える農家さんもいるのだとか。
うどの育て方に驚きつつ、いよいようど室へ。ほとんど垂直に感じられる梯子を一歩一歩下っていきます。残念ながらこの時期にはうどはなかったのですが、サツマイモの貯蔵庫としても使われており、熟成中のサツマイモが。うど室は思いの外広く、室の中は一年中15〜16度くらいが保たれるということで、外の風も入らず暖かかったです。壁を触ると粘土のような赤土で、「関東ローム層」という単語が急に親密に感じられます。上を見るとまるで手の届かない遠くに入り口が見え、とにかく深いところにいるのだと実感するとともに、こんなに深い地中で育てられる野菜があるということにも改めて驚きです。なんとも言えない初めての感覚を味わった不思議な体験でした。

地中深くで育てられる不思議な野菜、うど。現在武蔵野市では、櫻井さんを含め数人の農家さんが東京うどをつくっているそうです。
櫻井さんの野菜はJAの直売所に並ぶほか、野菜が多い時期には櫻井農園の庭先直売所もオープンします。うどは4月下旬以降の出荷ということです。まだ食べたことのない方は、春のうどをぜひ。あの地下室で育ったうど、楽しみです!

【櫻井農園直販所】

武蔵野市関前4-2
※庭先直売所は不定期です。